仏教用語『有頂天』の意味
『有頂天』
古いインドの世界観で、形ある世界の最も上に位置する天界のこと。
ただし、頂上といっても迷いの世界には変わらず不安定な境界。現在では、物事に熱中して我を忘れること。また、得意の絶頂の意味としてつかわれる。
仏教用語『有頂天』と時事をまじえた法雅のひとりごと
「K字決算」コロナ禍で二極化がくっきり
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
この時期、各企業の決算発表がおこなわれており、ニュース番組の解説で「K字決算」という聞きなれない言葉を耳にしました。
一瞬、黒字決算?と思いましたがちがいました。
コロナ禍に見舞われた昨年度、多くの企業は大打撃をうけ大きな赤字となった一方、巣ごもり需要などで大きな黒字をだした企業もあり、そのハッキリした二極化がまるで「K」の字に似ていることからK字決算といわれます。
具体的には、コロナ禍による移動制限によってJR各社、航空業界、ホテル業界は軒並み大幅な赤字をだし、巣ごもり需要とIT化、株高によって家電量販店、IT業界、宅配業界は大幅な黒字となりました。
とくに法雅が注目したのは、日本を代表するテーマパーク『東京ディズニーリゾート』の決算です。
昨年度の決算は541億円の赤字で、1996年の上場以来はじめての赤字となりました。
あのリーマンショックにも東日本大震災にも黒字だったディズニーランドが、ついに赤字とは。
企業も人も、どんなに成功しても必ず「落とし穴」があります
たしかにビジネスに絶対盤石はありません。
どんなに好調でも、大災害や戦争、不祥事などによっていきなり変化していきます。
どんなに成功したとしても必ず「落とし穴」はつきもの。今回のコロナ禍は、数十年に1度の巨大な落とし穴だといえます。
過去にも1度は頂点にたったものの、今は存在しない会社がちらほらあります。
かつては人材派遣会社の最大手になりながらも、違法派遣問題で廃業した「グッドウィル」。
また、当時は日本一のスーパーマーケットになりながらも、バブル崩壊を契機にイオンに買収された「ダイエー」。
このようなケースはほかにもたくさんあります。
さらに、会社だけではなく人も同様です。
かつては「キング・オブ・ポップ」といわれ、世界中を熱狂させたマイケル・ジャクソンは、晩年は逮捕されたりしてトラブルに見舞われ、50歳で急死しました。
また、1億4,000万枚以上のアルバムをセールスした女性シンガー、ホイットニー・ヒューストンも、晩年は大麻やコカインなどのトラブルが相次ぎ、48歳で急死しました。
マイケルもホイットニーもとても好きだったので、亡くなったとき泣きました。
このことから、1度頂点にたった企業や人は、その分落とし穴も大きいのではないかと思います。
ものごとの頂点に立って我を忘れることを「有頂天」と言いますが、もとは仏教由来の言葉です。
生活のなかに生きる仏教用語『有頂天』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『有頂天』です。
「有頂天」という言葉は仏教からきています。
古いインドの世界観で、形ある世界の最も上に位置する天界のことです。
ただし、頂上といっても迷いの世界には変わらず不安定な境界とされます。
現在では、物事に熱中して我を忘れること。また、得意の絶頂の意味としてつかわれています。
仏教でいう有頂天は、世界の頂点のことです。
しかも頂点といえど天界(天上の世界)ですので、刻々と変化する迷いの世界でもあります。
頂点の景色はとてもよいでしょうが、ずっと居つづけるのができないのが有頂点です。
たとえばエベレストの山頂は地上の頂点といえますが、いろいろに変化する地表の一部ともいえます。
ですから天気がよい時もあれば暴風の時もあります。
山頂についたら安全に下りることを考える必要があります。
同様に仏教でいう有頂天も、頂点に住むことは不可能なので必ず下りなくてはいけません。
問題はその下り方です。
ゆっくり慎重に下りていくのか。それとも途中、足を踏みはずして堕ちていくのか。
上に立てば立つほど、下り方は難しくなります。
どんなに成功しても「落とし穴」はつきものです
仏教の有頂天は、ものごとが好調だったり、大きな利益をあげたりしたときに、その状態をキープしつづける難しさを教えるものです。
そして、その成功が大きいほど難しくなります。
大概は、成功の悦(えつ)に入り、まわりからちやほやされ、だんだん生活がかわり、自分が自分でなくなり足を踏みはずすことが多いゆえ、「我を忘れる。得意の絶頂」という意味で現在つかわれています。
このように成功が大きいほど、落とし穴も大きいと戒(いまし)めていく。これは企業も人間も同じです。(合掌)