仏教用語『奈落』の意味
『奈落』(ならく)
古代インド文字(サンスクリット語)のnarakaを音訳したもの。
意味は地獄。現在では「奈落の底」というように物事のどんぞこ。
最後のどんづまりの意味で使われる。また劇場で、花道の下や舞台の床下の地下室のことを奈落という。
仏教用語『奈落』と時事をまじえた法雅のひとりごと
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
世の中、一瞬で「奈落の底」に堕ちる様子がたびたび見受けられます。
奈落の底に落ちた2つの例
最近ではグルメ王といわれていたお笑い芸人が、複数の女性と不貞行為をしていたと週刊誌に載ることがわかるや、すぐに芸能活動を自粛することを表明しテレビから消えました。
自粛を表明するその日のお昼の生放送番組をみていたので驚きました。
あれほど毎日のようにテレビに出ていた人が、一瞬で人気が消え週刊誌の記者に追われる立場になるのですから奈落の底に堕ちたといわざるを得ません。
しかし、これよりもっとひどいことがありました。
一国の法務大臣まで務めていた国会議員が昨年の選挙時、大勢の地方議員たちに賄賂と思われるお金を手渡し、票の取りまとめをしていたとして議員の夫婦が逮捕されました。
民主主義の根幹である選挙。その票を金で買収するという極めてひどく、また古典的なやり方に怒りをおぼえます。
大臣経験者が一瞬で容疑者になる。
まさに奈落の底に堕ちたといわざるを得ません。
そして、いずれも自分の今までのおこないによるものです。
さて奈落の底とよく言われますが、奈落という言葉はじつは仏教由来の言葉だということはあまり知られていません。
生活のなかに生きる仏教用語『奈落』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『奈落』です。
「奈落」という言葉は仏教からきています。
古代インド文字(サンスクリット語)のnarakaの音を漢字であてたものです。
意味は「地獄」です。
現在では「奈落の底」というように物事のどんぞこ。
落ちるところまで落ちてしまったという意味で使われています。
また劇場で、花道の下や舞台の床下の地下室のことを奈落といいます。
本当の奈落はどこかにあるのではなく、あなたの心の状態のこと
お釈迦様はnarakaという言葉をつかい苦しみや不幸を説きました。
本来は絶望や挫折をあじわった時に感じる苦しみの意味です。
それが中国にわたり地獄という言葉に訳され、漢字のイメージからか、まるで地底の刑務所のような痛ましい世界として表現されるようになりました。
閻魔大王にいたっては裁判官のイメージで定着しています。
このように、いつのまにか地獄の世界という世界観が先行してしまった感があります。
ふと立ち止まって考えると、地底にそういう地獄の世界があるかといえば誰も信じません。
地獄とはどこかにあるのではなく、1人ひとりの心の状態のことをいいます。
しかも地獄のような苦しみをあじわう原因は、自分自身の今までのおこないによるものと説かれています。
このように考えますと、今回のお笑い芸人や国会議員が一瞬で奈落の底におちたことは、すべて今までのおこないの結果だということが分かると思います。
地獄は『自業苦』ともいいますから、自分で自分のクビをしめないように正しく生きていきたいものです。