仏教用語『提唱』の意味
『提唱』
禅宗でつかわれる用語。
師家(しけ・修行僧を指導する僧侶)が宗門の教えの根本を提示して説法すること。提綱(ていこう)ともいう。現在では、「提唱する」「提唱者」のように、ある事を提示して、その必要性などを主張すること。
仏教用語『提唱』と時事をまじえた法雅のひとりごと
中学生の17人に1人が「ヤングケアラー」という実態
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
最近、ニュースなどで知った言葉があります。
ヤングケアラーです。
ヤングケアラーの意味は、家族の介護・家事・労働を日常的に行っている子供のことです。
今年、国はヤングケアラーの実態調査を初めておこないました。
すると、中学生のおよそ17人に1人がヤングケアラーだということが分かりました。
1クラスに2人はヤングケアラーがいるのですから、多いと感じます。
実際、ヤングケアラーはどういったことをしているのでしょうか。
- 障害や病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
- 家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
- 障害や病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
- 家計を支えるために労働をして、障害や病気のある家族を助けている
- がん・難病・精神疾患など、慢性的な病気の家族の看病をしている
一部を取り上げましたが、このように病気や貧困などに悩む家族の手助けを「過度に」おこなっている子供がじつは多いのです。
参照サイト:『厚生労働省』ヤングケアラーについて
ヤングケアラー問題が難しい3つの理由
ヤングケアラーはなぜ問題視されているのでしょうか。
それは、家族の手助けに多くの時間をとられ、学生にとって大事な勉強や部活。また友人との付きあいを無くすなど、中高生にとって必要な学力やコミュニティーが欠落することで将来の就職等に影響が出るからです。
就職に影響が出ることで、回りまわって家族に影響が出てしまいます。
しかし、ヤングケアラー問題の解決はとても難しいのが現状です。
①家庭内の問題であり、なかなか実態が見えない
ヤングケアラーは家庭内の問題であり、生活の実態は外からは見えづらいです。
また現在の家庭の生活を守りたいため、調査にも消極的な家庭が多いのが実態です。
②手伝いとヤングケアラーの線引きが曖昧
とくに小さいときから手伝いをよくする子供からすれば、家庭の手伝いとヤングケアラーの線引きが曖昧になります。
結果、自分がヤングケアラーだという自覚がない子供が多いのも現状です。
③行政の縦割りが解決を阻害
ヤングケアラー問題を行政が取り組もうとした場合、さまざまな部局を横断し、その調整が難しくなります。
たとえば子供の支援は「福祉局」ですが、学校も協力することになるので「教育委員会」も関係します。
また家族の支援も「介護」と「医療」では担当が分かれ、介護の場合でも「高齢者」と「障害者」ではまた担当が分かれます。
このように行政が一丸となってはじめてヤングケアラー問題は解決していくのです。
以上のように、ヤングケアラー問題の解決はとても難しく、家庭と学校と行政が一体とならないと進まないのです。
子供の将来を守るため、国会でもっと提唱すべきです。
ところで、提唱という言葉、もとは仏教由来の言葉なのです。
生活のなかに生きる仏教用語『提唱』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『提唱』です。
「提唱」という言葉は仏教からきています。
おもに禅宗でつかわれる用語。
師家(しけ・修行僧を指導する僧侶)が宗門の教えの根本を提示して説法することで、提綱(ていこう)ともいいます。
現在では、「提唱する」「提唱者」のように、ある事を提示して、その必要性などを主張することです。
仏教用語の提唱は、宗門の教えの要綱(要をなす大切なことがら)を大勢の前に示し説法をすることです。
この「大勢の前に示し説法すること」が、現在もちいられる提唱にも受け継がれています。
ヤングケアラー問題の解決のため、ぜひ国会で提唱してほしい
大勢の前で問題点などを提示し、その必要性などを主張することが現在の提唱の意味ですから、今回取り上げたヤングケアラー問題をもっともっと国会や報道などで取り上げて提唱すべきです。
中学生では17人に1人がヤングケアラー。ということは、2019年のデータでは中学生の生徒は約322万人ですから、約19万人がヤングケアラーということになります。
19万人の将来を守るためにも、この問題を大きく取り上げて解決のために提唱していただきたい。(合掌)