仏教用語『慈悲』カラスでさえ我が子を慈(いつく)しむ。人間も見習わなきゃ

仏教用語『慈悲』の意味

『慈悲』

仏や菩薩が衆生(しゅじょう)をあわれみ、いつくしむ心。
一説に、慈は「楽を与え」、悲は「苦を抜く」という意味だという。
とくに大乗仏教において、智慧とならべて重視されている。

現在では、いつくしみあわれむ心。なさけや善意の意味としてつかわれる。

仏教用語『慈悲』と時事をまじえた法雅のひとりごと

毎年カラスの子育てをする場所となったお寺の庭

「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。

法雅のお寺の庭のすぐ近くに携帯電話の基地局があり、高さは20メートルほどあるでしょうか。そこに毎年春頃からカラスのつがいが子育てをしています。

じつは昨年ちょっとした事件がありました。

カラスのつがいは毎年同じ巣を使うんでしょうか。
カラスはみんな黒いので区別はつきませんが、昨年までいたカラスは法雅のお寺の庭を縄張りにして我が物顔。

朝から大きな声で鳴き、庭の枝を折り、妻に襲い、挙げ句の果てにはお参りにきた檀家さんにも襲う始末。

さすがに堪忍袋の緒が切れた法雅は、カラスの巣の撤去を決断しました。

基地局の所有者である携帯電話会社に巣の撤去を依頼し、10日ほどで巣の撤去をしてもらいました。

撤去の時もカラスのつがいは作業員のまわりを飛び回り抗議してましたが、途中で観念したのか遠くに飛び去っていきました。

その様子を見ていた法雅は、すこしかわいそうに感じましたが、お参りにきた檀家さんの安心安全を守ることが住職としての責務ですからやむを得ません。

今年もカラスのつがいが来ましたが、すこし様子がちがいました

やれやれ、これでカラスのことで悩まなくてよくなると安堵していたのもつかの間、今年の春からいつもの基地局にカラスのつがいが巣を作っているのを確認しました。

法雅夫婦に緊張が走りました。

6月中旬ころから育ったヒナが飛行訓練を始めると、カラスのつがいの警戒がピークに達します。

ところが昨年までのカラスとちがって、性格が少しおだやかなようです。
妻は数回襲われたようですが、法雅にもお参りにきた檀家さんにも静かでした。

そうしているうちに2、3日前からピタッと鳴き声が聞こえなくなりました。
きっと巣立ったんでしょうね。

人間もそうですが、カラスにも性格のちがいがあることを知りました。

法雅のお寺の庭は、毎年カラスが子育てをする庭です。
子供がかわいいのは人間もカラスも同じ。子供がちがう場所に行くとき、親の警戒が高まるのも人間もカラスも同じです。

しかし、カラスが子供を大事に思い慈悲を垂(た)れるのは、いつも死と隣り合わせの自然界に生きる術(すべ)を身につけさせることが目的であり、決して甘えではありません。

一方、人間の親は慈悲の意味を誤解し、ついつい過保護にしてしまう傾向が見受けられます。

ところで慈悲という言葉、仏教由来の言葉だとご存じの方は多いと思います。

生活のなかに生きる仏教用語『慈悲』

そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。

今回は『慈悲』です。
「慈悲」という言葉は仏教からきています。
仏や菩薩が衆生(しゅじょう)をあわれみ、いつくしむ心。
一説に、慈は「楽を与え」、悲は「苦を抜く」という意味だとされます。
とくに大乗仏教において、智慧とならべて重視されています。

現在では、いつくしみあわれむ心。なさけや善意の意味としてつかわれます。

ずいぶん昔のことですが、こういうことがありました。

ある檀家さんが、自分の都合を通そうと法雅に許可を求めてきました。
もちろん法雅は断りましたが、怒った檀家さんは「仏教は慈悲ですよね。なんで許してくれないんですか!」と言って帰って行きました。

慈悲の使い方が間違っていると思いました。

とかく現在の慈悲の使われ方は、自分の都合を実現するための言葉、または情けの意味で用いられていることが多いようです。

しかし本来の慈悲の意味は、仏道修行の目的「悟り」を実現させるための仏様の働きのことです。
ゆえに、時に仏様は弟子たちを叱りつけたり、やさしく教導したりして目的地「悟り」へと導くのです。

カラスでさえ我が子を慈(いつく)しむ。人間も見習わなきゃ

慈悲は悟りへの働きですから、子育てとはまた意味がちがいます。

ですが、1人の立派な人間へと成長させる意味では共通しているところはあります。
あえて慈悲の意味から子育てを考えると、1人の人間を真っ当に自立させるために時には叱りつけ、時には慈愛をもって育てることが大事だと思います。

ただ甘やかすだけ、子供の都合を優先した子育てではカラスの子育てにも劣ります。
毎年、カラスの子育てを見ながら学ぶことも多いものです。(合掌)

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