仏教用語『娑婆』の意味
『娑婆』
古代インド文字(サンスクリット)サハーが語源。
人間が現実に住んでいるこの世界のことであり、苦しみが多く、耐え忍ぶ世界の意味。忍土ともいう。
仏教の世界観では、私たちの住む世界は苦しみを耐え忍ぶ場所とされ、ゆえに仏が教えみちびく場所とされる。現在では、自由を束縛されている軍隊・牢獄などに対して、その外の自由な世界。俗世間のことをいう。
仏教用語『娑婆』と時事をまじえた法雅のひとりごと
アイヌ語由来の北海道の地名
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
北海道に住んで6年目になり、今は生活も落ち着きましたが、来た当初は慣れないことも多く苦労しました。
そのなかの1つが北海道の独特な地名です。
北海道で最大の都市・札幌(サッポロ)もしかり。札幌の地名が全国区となった今では、普通に「さっぽろ」と誰もが違和感なく言いますが、漢字の意味から考えると、まったく意味が通じません。
札は「手紙やお金」の意味。幌は「鎧の一部」の意味。
意味が通じませんし、「ポロ」という言い方も独特ですよね。
ほかにも、苫小牧(トマコマイ)や室蘭(ムロラン)、長万部(オシャマンベ)など、難解な地名が多いのが北海道の特徴です。
本州の地名では、地形や歴史に関するものが多いという印象でしたが、北海道の地名では先住民族アイヌの言葉に漢字をあてたゆえに独特です。
たとえば札幌の地名の由来は、「乾く大きい川」という意味のアイヌ語「サッポロペッ」に「札」と「幌」の漢字をあてた地名です。(諸説あります)
このように、北海道の地名の8割がアイヌ語由来とのこと。地名を理解するためには、漢字そのものではなく、アイヌ語の意味を理解することが必要になります。
北海道の地名に興味がある方は、北海道庁が発信する『アイヌ語地名リスト』をご覧ください。
諸説の比較もあり、中身の濃い内容となっています。(北海道庁『アイヌ語地名リスト』)
北海道の地名と仏教用語の意外な共通点
ところで、北海道の地名と仏教用語。意外な共通点があるのです。
北海道の地名は、アイヌ語の言葉に漢字をあてたものが多く、仏教用語は、サンスクリット語に漢字をあてたものが多いことです。
たとえば、今回紹介する『娑婆』(しゃば)という言葉。漢字そのものに意味はありません。
間違っても「砂かけばばあ」の意味ではありませんよ。
よく、俗な言葉で「娑婆はいいなぁ」とか使いますが、本来はどういう意味なのでしょうか。
生活のなかに生きる仏教用語『娑婆』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『娑婆』です。
「娑婆」という言葉は仏教からきています。
古代インド文字(サンスクリット)サハーが語源で、人間が現実に住んでいるこの世界のことであり、苦しみが多く、耐え忍ぶ世界の意味。忍土ともいいます。
仏教の世界観では、私たちの住む世界は苦しみを耐え忍ぶ場所とされ、ゆえに仏が教えみちびく場所とされます。
現在では、自由を束縛されている軍隊・牢獄などに対して、その外の自由な世界。俗世間のことをいいます。
耐え忍ぶ場所が、いつの間にか自由な場所に。意味が逆転してますね。
娑婆という言葉は、「耐え忍ぶ世界」を意味するサンスクリット語「サハー」に、「娑」と「婆」の漢字をあてた言葉です。
ですので、さきほどの北海道の地名のように漢字そのものに意味はありません。
このような仏教用語は娑婆(しゃば)のほかにも、舎利(しゃり)・檀那(だんな)・奈落(ならく)・阿鼻(あび)・盂蘭盆(うらぼん)などなどたくさんあります。
娑婆は苦しい世界だけど、仏の救いがある世界でもある
私たちが住む世界は四苦八苦をはじめとして、苦しみが連続する世界であることを教えている言葉が娑婆です。
ゆえにその苦しみを耐え忍ぶゆえ「忍土」ともいわれます。
では、苦しい世界に終始するかといえば、そんなことはありません。
苦しい世界だからこそ、仏様がみちびく世界だと説かれています。
娑婆に立つ仏様の存在は、まさに暗闇のなかに輝く光明です。
そのことを忘れずに、苦しい時、悩んだ時、信頼する住職に尋ねてみましょう。(合掌)