仏教用語『殺生』コロナ禍のなか、暴力の連鎖を止めることができるか

仏教用語『殺生』の意味

参照『殺生』(せっしょう)

殺生戒という戒律があるように、生きものを殺すことを殺生という。

現在ではむごいこと。思いやりがないひどい仕打ちのことをいう。

仏教用語『殺生』と時事をまじえた法雅のひとりごと

「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。

昨日のニュースで、アメリカ全土では黒人差別に対する抗議デモが激しくなっていると報道がありました。

発端は黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に拘束された際、命をおとしたことからです。

トランプ大統領は、軍を動員してデモ隊を鎮圧すると表明、緊迫感がいっそう増しています。

そんななか、ジョージ・フロイドさんの弟がデモ隊にむかって平和的にデモをするよう呼びかけたのが印象的でした。

この報道にたいして法雅は3つのことを思いました。

  1. 暴力の連鎖はどこかで断ち切らないといけないこと。
  2. 別の目的をもつ一部のデモ隊がかならず過激化すること。
  3. 新型コロナウイルス感染のなか、本来はデモをしている場合ではないこと。

以上の3点です。

1つ目は、暴力の連鎖はどこかで断ち切らないといけないこと。

今回、白人警官が黒人男性にむかって取り締まりを越えた「暴力」の結果起きた抗議デモです。

人種差別問題はアメリカが長年かかえてきた問題であり、毎回こういうケースがあるたびに抗議デモが起きています。

やはり暴力はいけませんし、人の命を亡くすまでの暴力に弁解の余地はないと思います。

そして、亡くなった人はもう戻ってきません。

デモ自体は良いですが、それが暴動に発展して次の暴力になれば「暴力の連鎖」が始まってしまいます。

これではデモとは言えません。

ジョージ・フロイドさんの弟がデモ隊に呼びかけた、

「あなたたちの怒りは理解できます。
しかし私に比べればその怒りは半分です。

その私は暴れて物を壊してはいません。
地域も破壊していません。

それにひきかえ、あなたたちは何をしているのですか。

兄は戻ってきません。
平和的にやってください。お願いです」

この弟の訴えが答えだと思います。

生活のなかに生きる仏教用語『殺生』

そこで、生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『殺生』です。

「殺生」という言葉は仏教からきています。お釈迦様がいらっしゃった時から生きものを殺してはいけない「殺生戒」というおきてがありました。

それが現在では「そんな殺生な」と使われるように思いやりのない仕打ちの意味で使われています。

仏様はなぜすべての命を殺すなと言われるのでしょうか。

それは人間でも虫でもみんな善根(仏になる心)をもっていると教えているからです。

善根をもっているものを殺すと仏の命をも害することと同じになり、いつかその報いを受けることになるので気をつけなさいと注意されているのです。

とくに暴力で人を殺すことはもっともいけませんし、その罪はやがて自分に返ってくるのが仏教の教えです。

暴力の連鎖はどこかで止めないと、死傷者を増やすばかりではなく、その報いの範囲もとても広いものになるので誰も得をしない結果になります。

今はコロナ禍。一日も早い平穏を取りもどせるかが大事

2つ目は、別の目的をもつ一部のデモ隊がかならず過激化すること。

これが諸悪の根源かもしれません。

ほとんどのデモ隊がふつうに抗議行動をしているなか、その騒ぎに乗じて破壊や略奪などをするグループがいます。

こういうグループらによって、デモ隊イコール暴徒というレッテルを貼られることはデモ隊にとってもマイナスです。

デモ隊のなかで、そういうグループを徹底して排除しなければなりません。

3つ目は、新型コロナウイルス感染のなか、本来はデモをしている場合ではないこと。

アメリカは世界でもっとも新型コロナウイルス感染者が多い国です。

一時期よりは少なくなったとはいえ、デモをして密接・密集していては感染が拡大することは当然といえます。

なんとも良くないタイミングで死亡事件という悲劇がおきたものです。

一日も早い平穏な日常にもどってほしいこと。法雅は祈ります。(合掌)

殺生アイキャッチ画像
最新情報をチェックしよう!