仏教用語『盆』の意味
『盆』(ぼん)
お盆の正式な名前は「盂蘭盆(うらぼん)」といい、古代インド文字(サンスクリット)の『ウルランバナ』の音訳。
意味は「逆さまに吊される」。死後、逆さまに吊される餓鬼の苦しみをうけた母親を、息子・目連が救ったことがお盆のはじまりとされる。
仏教用語『盆』と時事をまじえた法雅のひとりごと
お盆は8月の「お盆休み」として定着
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
今日、7月13日はお盆の入りです。
そこで今回は「お盆」について書いてみたいと思います。
日本には先祖供養をする行事として「お盆」と「お彼岸」があり、お彼岸の中日は「春分の日」と「秋分の日」になっていますが、仕事が休みじゃない人が多く、そんなに定着していない印象です。
一方、お盆は8月の「お盆休み」というように家族で故郷に帰る期間として定着しているようです。
お盆の起源は、母を救いたい一心の子のおこないから
そんなお盆の起源を考えたことがあるでしょうか。
じつは遠い昔、お釈迦様の時代にまでさかのぼります。
弟子の目連(もくれん)が、亡くなった自分の母親の姿を神通力(じんつうりき)で見たことから話しがはじまります。
目連の母親は、生きていた時は欲が深くケチな性格でした。
その生前のおこないにより死後、餓鬼(がき)の姿になっていたのです。
餓鬼(がき)の苦しみ
餓鬼の姿とは、飲む物も食べる物もなく痩せほそっています。
首は細く、おなかだけは大きくふくらみ、口を大きく開けて、手をあわせながら物ごいをする母親の姿をみました。
たとえようのない悲しみにしずんだ目連は、母親を救いたい一心で神通力をつかいご飯を届けました。
母親は喜んで右手でご飯をにぎり、左手でご飯をかくしながら口ヘ入れようとしましたが、どうしたことでしょうか。
もっていたご飯が炎となり、たちまち母親の体を燃やし苦しめる結果となりました。
目連はこの様子をみて慌て、今度はたくさんの水を届けたところ、その水が薪(まき)となって、ますます母親の体を焼いてしまう結果となりました。
それはあまりにも、子供としては見るに堪えない姿でした。
目連は自分の神通力では母親を救えないことを悟り、お釈迦様に相談しました。
7月15日にお盆の法要がはじまる
お釈迦様は次のように話しました。
「あなたの母親は、とても罪が深いのです。
したがって、あなた1人の力では救うことはできません。
どんな神通力が強い人でもおよばないことでしょう。
母親を餓鬼の世界から救いたいのならば、夏の修行(安居という)が終わる7月15日に、たくさんの僧侶を集め、僧侶にお供えものをして母親の法要をおこなえば、餓鬼の苦しみから救うことができます」と。
目連は教えられたとおりに法要をおこない、母を餓鬼の苦しみから救ったというお話しです。
このことは『盂蘭盆経』というお経典にとかれており、その故事を由来として7月15日にお盆の法要がはじまりました。
生活のなかに生きる仏教用語『盆』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教のことば。
今回は『盆』です。
ご存じ「お盆」は先祖供養をする仏教行事です。
お盆の正式な名前は「盂蘭盆(うらぼん)」といい、古代インド文字(サンスクリット)の『ウルランバナ』の音訳です。
ウルランバナの意味は「逆さまに吊される」。
それほど餓鬼の苦しみはつらいことをあらわしています。
母親がうけた壮絶な苦しみを助けたい一心の、子・目連の健気なおこないから、現代にまでつづくお盆の行事が始まりました。
お盆の日程はじつは3種類あります
7月お盆と8月お盆に別れたわけ
お盆の日程について「7月お盆」と「8月お盆」がありますが、どうして2つに別れたかご存じでしょうか。
これは暦(カレンダー)の関係です。
現在は太陽暦(グレゴリオ暦)を当たり前のように使っていますが、明治5年までは昔の暦、いわゆる旧暦(太陽太陰暦)を使っていました。
ですから明治5年まではお盆と言えば全国津々浦々7月15日だったのです。
ところが明治6年から現在の太陽暦を使うようになったことから、太陽暦になってもそのまま「7月15日」にお盆をおこなう地域と、太陽暦と旧暦では約1ヶ月のズレがあることから、旧暦の7月15日に近い現在の「8月15日」にお盆をおこなう地域とに分かれたのです。
同じ県内でも川をへだてて7月と8月に別れたりして奇妙な現象ですね。
ある意味もっとも正しい日程の3つ目のお盆
じつは7月盆、8月盆だけじゃないんです。
沖縄とか一部の地域では、毎年旧暦の7月15日を現在の暦に計算して、8月後半から9月前半にお盆をおこなう地域もあります。
この地域では毎年お盆の日程が前後します。
日本では3種類の日程でお盆がおこなわれています。
お盆には先祖の供養のためお寺におまいりしましょう。
アニメ『リメンバーミー』の衝撃
最後に法雅が気になったことをひとつ。
何年か前にディズニーアニメの「リメンバーミー」を見たとき、ちょっと驚きました。
年に1度「死者の日」に亡くなった先祖が帰ってくるという話しに、
「えー!日本のお盆と同じ風習があるの?」とビックリしました。
舞台はメキシコのようですが、土着の信仰とカトリック信仰が混合したと考えればよろしいのでしょうか?
詳しくご存じの方は教えてくださいませ。