仏教用語『悪魔』誰もが悪魔の所行をする要因をもつからこそ、心の調整は肝心

仏教用語『悪魔』の意味

『悪魔』

仏教でいう悪魔は、仏道を妨げる悪神の総称をいう。
古代インド文字(サンスクリット)のマーラ(魔羅)からきている。
キリスト教で説くサタンは、悪および不義の擬人的表現なので意味がちがう。

現在では残酷・非道な人を悪魔という場合が多い。

仏教用語『悪魔』と時事をまじえた法雅のひとりごと

オリンピック期間中に無差別刺傷事件が起きる

「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。

東京オリンピックで盛り上がっていた8月6日、ひとつの事件が報道され世間に衝撃が走りました。

東京都内を走る小田急線の車内で無差別の殺傷事件が起きたのです。
犯人は電車に乗車するとバッグから包丁を取りだし、近くにいた女子大生を刺し、その後刃物を振り回して次々と乗客を襲ったのです。

とても痛ましい事件がまた起こりました。

やがて逮捕された犯人は、事件を起こした経緯を次のように供述しました。

  • 数カ月前から生活保護を受けており、こうした境遇に不満を感じていた
  • 大学や出会い系サイトで知り合った女性に馬鹿にされてきた
  • 華やかな女性や一緒にいる男性の首を切りたいと思うようになっていった
  • 電車での大量殺人を前から考えていた

どうして人は、時に悪魔のような所行をしてしまうのでしょうか。

法務省がまとめた「無差別殺傷事犯に関する研究」の内容

インターネットで検索すると、『無差別殺傷事犯に関する研究』と題する法務省のサイトを見つけました。

公開されている54ページの内容から、事件の背景や動機についてまとめてみました。

(参照サイト:『法務省』無差別殺傷事犯に関する研究

今回のような無差別殺傷事件をおこす犯人の犯行動機は次の5つです。

  1. 自己の境遇への不満
  2. 特定の者への不満
  3. 自殺・死刑願望
  4. 刑務所への逃避
  5. 殺人への興味・欲求

おおよそ、この5つに該当し、とくに「自己の境遇への不満」が多いとされています。

次に、これらの犯行を犯す背後になにがあったのでしょうか。

・友人ができないことから誰からも相手にされないという対人的孤立感
・誰にも必要とされていないという対人的疎外感
・失職したことを契機とする将来への不安
・生活に行き詰まり,生きる気力を失い餓死しようという絶望感
・生きていても仕方なく死にたいが,死ぬのは怖いから刑務所に戻りたいという現実逃避的な願望
・努力しても何も報われないという諦め
・職場いじめを受けたと感じてのストレスや怒りのため込み
・守るもの,失うもの,居場所が何もないという孤独感や虚無感
・自分だけがみじめな思いをしてきたのに周りがぬくぬく生きているという被害感や怒り
・失職や交際相手との復縁がかなわず何事も自分の思惑どおりに行かないという憤まん

出典:『法務省』無差別殺傷事犯に関する研究

このような背景から、今の生活や将来に対して後ろ向きになり、ものの見方や考え方が極端に偏り、視野の狭い思い込みにとらわれ犯行におよぶとまとめられています。

でも、これらの背景って法雅も経験しているし、身近におきていることです。

きっと、誰もが世間を震撼させる悪魔のような所行をする要因をもちながら生きていると感じています。

ところで、悪魔という言葉、もとは仏教由来の言葉なのです。

生活のなかに生きる仏教用語『悪魔』

そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。

今回は『悪魔』です。
「悪魔」という言葉は仏教からきています。
仏教でいう悪魔は、仏道を妨げる悪神の総称のことです。
古代インド文字(サンスクリット)のマーラ(魔羅)からきています。

キリスト教で説くサタンは、悪および不義の擬人的表現なので意味がちがいます。

現在では残酷・非道な人を悪魔という場合が多いです。

仏教用語の悪魔は、仏道修行を邪魔するはたらきのことです。

お釈迦様が悟りを開く直前、それを妨げようと悪魔が襲いかかった話しは有名です。

悪魔たちは誘惑や暴力をもって悟りの邪魔をしますが、お釈迦様はそれらに打ち勝ち成道(じょうどう・悟り)するのです。

世間でも「好事魔多し」といいます。

なにか物事が大きく進展しそうな時にかぎって、いろいろな邪魔が入るもの。

でも別の見方からすれば、魔が大きければ大きいほど、それを乗りこえた先の得るものは大きいともいえます。

誰もが悪魔の所行をする要因をもつからこそ、心の調整は肝心です

仏教の教えでは、誰もが地獄のような命をもっていると説いています。

さきほどあげた事件の背景と、誰もがもつ地獄の命。つまり誰もが犯罪の加害者になる要因をもっているということです。

見方を変えれば、それだけ私たちの心は強くないともいえます。

自分の心と常に向きあってどういう状態かチェックする。
親しい人に心の内を話すことも有効でしょうし、お寺の門をたたいて話しをしてみるのもよいでしょう。

心の調整を怠らずにいきましょう。(合掌)

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