仏教用語『未曾有』の意味
『未曾有』(みぞう)
もともとは「びっくりした」という意味。
今までおこったことの無いことに「びっくりした」が本来の意味だが、現在では「今までおこったことの無いこと」の意味として使われている。
仏教用語『未曾有』と時事をまじえた法雅のひとりごと
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
今日でゴールデンウィークが終わりますが、期間中ずっと家にいてくださいと要請されるゴールデンウィークはいままでなかったですね。
まさに「未曾有」のゴールデンウィークでした。
新型コロナウイルス感染拡大をふせぐためには致し方ないことでしたが、その苦労の甲斐もあって全体的に感染は減少しているようです。
一部の地域をのぞいて明日から自粛要請を解除するところもあり、ホッと胸をなでおろしている方もいると思います。
しかし、あくまで感染防止対策はつづけるという前提です。
ひきつづき三密をさけ、マスクと手洗いをつづけたいと思います。
生活のなかに生きる仏教用語『未曾有』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『未曾有』です。
「未曾有」という言葉は仏教からきています。
もともとは「びっくりした」という意味です。
今までおこったことの無いことに「びっくりした」が本来の意味ですが、現在では「今までおこったことの無いこと」の意味として使われています。
漢字をみれば「未だ曾(かつ)て有らざる」ですから自然のなりゆきといえましょう。
前回も言いましたが、言葉は生き物ですので、人間の生活にあわせて意味が変わるのは自然だと思います。
人類がウイルスと戦うことはこれまでもたびたび起きましたので、これは未曾有のできごとではありません。
それでも今回の新型コロナウイルス感染症対策においては少なくとも日本にとって未曾有のできごとがありました。
ネット社会への定着こそが未曾有
それは「ネット社会の定着」です。
政府は仕事のリモート化を推進し、自宅で仕事をする人、リモートで会議をする人が急増しています。
またネット通販やデリバリーを利用する人も増えています。
学校はオンライン授業、病院はオンライン診療が始まっています。
ウイルス感染防止の名のもとにネットを介して人どうしがつながりあう世の中が急ごしらえに作られています。
ここ数ヶ月のうちにネットに依存して成立させる社会へと大きく舵をきったこと。
これが「未曾有」なできごとだと思います。
昨夜NHKのニュース番組を見ていたとき、アメリカの国際政治学者イアン・ブレマー氏のインタビューがありました。
内容はコロナ終息後の世界情勢についてです。
要旨をまとめました。
- コロナ終息後の世界はもとのグローバル社会にはもどらず保護主義が強まる。
- 企業は高い人件費をおさえるためAIやロボットなどの技術革新を進める。
- よって世界中に不平等がますますひろがり、反エリート感情が高まりポピュリズムが勢いを増す。
- アメリカと中国を軸とした世界が構築され世界の分裂がますます進み大きな危機となる。
- この危機を脱する解決策は各国の政府からでは出てこない。解決策はおもに個人・企業・NGOからでてくるだろう。
イアン・ブレマー氏は「これからの将来、希望をもたらすのは個人であって、国や組織ではない。そうした人々が力を合わせることを願っている。」と述べていました。
正直言いまして、コロナ終息後の世界はどのように変化するかはまだ誰も見ていません。
でも、今までとはちがう世界だろうなと肌で感じます。
もしも世界の分裂が進んだとしても、ネットによる個人個人のつながりはより強くなるのではないかと思っています。
皆さんはどのように思いますか?