仏教用語『知事』の意味
『知事』(ちじ)
インドの僧院における役職名「カルマ・ダーナ」を漢訳したもの。
寺院の僧侶に奉仕し雑務や庶務をつかさどる役職をいう。
のちに仏教が中国にわたり制度化された。宋代には地方の長官を指す言葉として使用され、現代にいたる。
仏教用語『知事』と時事をまじえた法雅のひとりごと
「一期一会の御縁に感謝」僧侶歴30年の現役和尚・法雅(ほうが)です。
新型コロナウイルスが日本に感染するようになり4ヶ月が経過しました。
その間、社会全体が感染対策をするためいろいろな変化をしている昨今です。
とくに各都道府県の知事のリーダーシップがこれほど試される機会は今まであったでしょうか。
毎日のように知事が感染状況を報告し、感染対策をしながら経済をどのようにまわしていくか判断していくのですから大変な役目だと思います。
コロナ禍に知事の手腕を発揮することが、政治の関心をとりもどす機会になるかもしれません。
生活のなかに生きる仏教用語『知事』
そこで本日の生活のなかに生きる仏教用語。
今回は『知事』です。
「知事」という言葉は仏教からきています。
インドの僧院における役職名「カルマ・ダーナ」を漢字に訳したものです。
もともと知事は寺院の僧侶に奉仕し、寺院内の雑務や庶務をつかさどる役職をいいます。
のちに仏教が中国にわたり制度化され、とくに禅宗においては事務や庶務などの分野を6つに分け、それぞれ知事を置きました。
中国の宋代には地方の長官を指す言葉として使用され、現代の日本でも使われています。
知事は、今も昔もプロデューサー
知事は漢字のごとく「事を知る人。つかさどる人」です。
寺院においては寺院内のことをよく知らないと知事は務まりません。
法雅のお寺のように小さいところでは必要ありませんが、たとえば僧侶が100人いるような大きなお寺にもなると、たくさんの人がサポートにまわらないとお寺が運営できません。
僧侶は修行をし、勉強をし、布教します。
こういった僧侶の修行を円滑に進めるため、食事の世話をしたり、事務や雑務をしたり、建物の管理をしたりする人が必要になります。
これが「知事」です。
さらに寺院の知事は、僧侶1人ひとりの個性を理解して、それぞれにあった居場所や役目を助言していたそうです。
つまり知事は、僧侶に仕えながら、僧侶のことをよく知り、僧侶の個性をのばす役目、今でいえばプロデューサーのような存在でもありました。
現代の知事はどうでしょうか。
選挙で選ばれた知事は、都道府県民のために奉仕し、都道府県民の生活環境をつくるプロデューサーでなければなりません。
とくにコロナ禍の今、知事の力量が問われています。
知事は漢字のごとく「事を知る人。つかさどる人」です。
コロナをはじめ諸問題を正しく知っているか、まずそこからではないかと思います。
正しく知っているからこそ、正しくプロデュースできる。今も昔も変わらないはずです。